いろいろ

 

 

白くて白いネコがいた。

 

 

 

雪よりも白く、雲よりも白かった

 

 

 

 

 

 

その白さからみんなにかわいがられて、自慢の毛並みだ。

 

 

 

 

そのネコは今日も街を揚々と歩いている。

またいつものようにみんながかわいがってくれる。

 

 

ふと気がつくと道の端に人が集まっていた。

 

そこでは鼻先だけ黒い仔猫がみんなからたくさんの愛情を受けていた。

 

 

白いネコはとても腹が立った。

 

 

 

 

その夜、白いネコは画材屋さんにそっと忍び込んだ。

 

油絵と紙とインクの匂いが入り混じったなかでお目当てのものを見つけた。

 

 

 

 

 

 

次の日から鼻先が黒くなった白いネコが自慢げに街を歩いていた。

 

 

 

そして、街の人たちからはまたいつものように

 

「かわいいね」と言われてちやほやされていた。

 

 

 

そんな風にして、また誇らしげに歩いていると今度はトラ柄の猫が人気者になっていた。

 

 

 

その夜、鼻先が黒くなったネコはまた画材屋さんへと忍び込んでいた。

 

 

 

 

次の日鼻が黒いトラ柄のネコが街を闊歩していた。

 

 

 

だけど、それでも毎日いろんな柄の猫が可愛がられる。

 

 

 

その後もネコはどんどん柄を増やしていった。

 

 

 

自慢の毛並みを携えて、今日もネコは威風堂々街を歩いていた。

すると、街のはずれから陽気な声が上がっていた。

 

 

 

いつか自分をかわいいと可愛がってくれていたひとたちの姿がそこにあった。

 

 

 

しかし、カワイイ、キレイだと声をかけられていたのは真っ白い猫だった。

 

ネコはそれくらいの白さなら自分のほうがよっぽどきれいだと誇らしく思い、

自分の姿が映った窓を見た。

 

 

 

 

 

 

 

 

そこには色が混じりすぎて、真っ黒になった自分の姿があった。

 

 

ネコは大きな目をゆらゆらと揺らした。

 

 

 

 

 

いや、正確には揺れたように見えた。

 

 

 

 

 

 

 

ゆらゆらと揺れていたものはぽたりぽたりと落ちていった。

 

 

 

ネコは自分が泣いていることに気づいた。

 

その日からネコは自分に自信がなくなり、なるべく人の目に着かないように歩いた。

 

 

あるとき自分と同じように真っ黒い猫を見かけた。

 

ネコは少し喜んだ。

 

 

 

 

 

同じ境遇の猫がここにもいたのだと。

 

 

 

 

 

後をつけてみると、画材屋によくくる若い男が黒猫を抱きかかえていた。

 

 

 

 

 

とてもやさしい眼で黒猫のことを見ていた。

 

 

 

 

 

黒猫が男の手をはじいて飛び降りたかと思ったら、

 

黒猫と男は並んで歩きだした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ネコは衝撃をうけた。

周りを見るとどんな毛並みだろうと、どんな柄だろうとみんな抱きかかえるあったかそうな腕があった。

 

 

 

ネコはすごい悔しいような、どこかすっきりしたような顔をしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

街では今日も猫をかわいいと言う声がいたるところから聞こえていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そんななかで一匹、まるで他人事かのように昼寝をしているネコがいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

眼を閉じ、耳を倒し、すっかりリラックスしていたが、

 

 

 

そのネコは不意に頭に感じたあたたかい感触におどろいて顔を上げた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「きれいだね、君。太陽のひかりが当たると虹色に光ってる。まるでいろんな色がまじりあったかのような…」

 

 

 

 

 

 

 

 

ネコは驚いてなにも反応ができなかった。

 

 

 

 

 

「きれいだね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ネコはようやくの思いで返事をした。

 

 

 

 

 

「にゃーお」